医師の処方箋が不要な医療用医薬品について、薬局が顧客の必要量だけを取り出して販売する「零売(れいばい)」(分割販売)が広がっている。
医薬品は、処方箋が不要でドラッグストアなどで気軽に購入できる「一般用医薬品」と、医師の処方や指示による使用を前提とする「医療用医薬品」に分類されている。医療用医薬品の大半は、処方箋が必要な「処方箋医薬品」。それ以外も処方箋に基づく交付が原則だが、2005年の厚生労働省通達で、条件を満たせば処方箋なしでも購入できるようになった。必要な受診勧奨を行った上で、薬剤師が必要最小限の量を分割し、対面により販売。薬局には、販売日や量、患者の連絡先などの販売管理や患者の薬歴管理などが義務づけられている。処方薬と異なり健康保険の対象外だが、受診料や調剤基本料がかからないため、患者の負担が軽減される場合もある。
大阪市北区の繁華街・北新地に21年8月に開店した「アリス薬局」では、痛み止めやビタミン剤、胃腸薬、漢方などの分割販売を取り扱っている。薬剤師の石井結衣社長(33)は「ドラッグストアと病院の中間的な存在。薬でセルフメディケーション(自己治療)する人たちの、服用薬のことを詳しく教えてほしい、相談がしたい、といった要望に応えることができる」と説明する。
アリス薬局は17年に堺筋本町で開店し、北新地店が2店目だ。会員制で、堺筋本町店には4000人以上の顧客が登録している。新型コロナ感染拡大以降、来店者数が増加しており、石井社長は「感染リスクを考えると、病院へ出向くのが怖いという声も多い」と語る。無制限な販売に陥らないようカウンセリングを徹底しており、「薬だけ早くほしいという方もいるが、対面でしっかり説明を聞いてもらう。大量の薬を処方されている方などには、まず医師による治療が優先だとお伝えしている」と話す。
薬剤師は、副作用やアレルギー情報、添加物など薬について幅広く把握し、分かりやすく説明することが必要だ。患者の状況や悩みを聴き出し、カウンセリングは時に1時間以上に及ぶこともある。石井社長は「接客や販売後のフォローも重要。顧客の疑問や不安を解消し、納得いくまで対応する」と強調する。
薬局開設申請を管轄する市生活衛生課は、「医師による診断と処方箋が大前提で、分割販売はやむを得ない場合の手段の一つとして捉えてほしい。薬局へは、販売後も服用者の状況確認などを行うよう指導している」としている。
(2021年10月22日 大阪(毎日新聞)gooニュース)
YDCのコメント:行政との間には温度差がある